COLUMN

2022.03.27

喫煙の影響について

【喫煙者数の動向】

喫煙は様々な健康被害を起こすことが知られており、最近では病院はもちろん商業施設やレストランなどでも禁煙を標榜する施設が増えています。禁煙活動が広がるにつれ、日本でも喫煙率は1960年代をピークにして、徐々に喫煙者の数は減少傾向に転じました。下のグラフにあるように、特に2000年代に入ってからは、喫煙率はかなり低下してきています。全国たばこ喫煙者率調査/2018年によると、全国の喫煙率は、19.9%(内訳は男性が29.0%、女性が8.1%)とされています。しかしながら欧米等など諸外国と比べますと特に男性の喫煙率は、いまだに高い状況にあります。

我が国における喫煙者数の動向

厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成6年~平成30年)より

 

【タバコの害について

タバコの煙には約4000種類もの化学物質が含まれています。中でも特にニコチン、タール、一酸化炭素は三大有害物質と言われます。これらの成分は主流煙より、タバコの先端から出る副流煙の中に、より多く含まれています。ニコチンやタールは発がん性や循環器疾患を引き起こす元になると言われており、タバコを吸い続ける事で男性で約8年、女性では約10年も寿命が短縮する可能性があるとまで言われています。

タールの発がん性に関しては、昔から肺がんとの関連性が有名ですが、それ以外にも口腔内がん、咽頭・喉頭がん、食道・胃・大腸などの消化器がん、膀胱・腎臓のがん等、あらゆるがん疾患の発症率を上げる事が明らかになっています。例えば肺がんによる死亡率は喫煙者では非喫煙者の約4.5倍、咽頭がんに至っては約32.5倍にもなると言われています。ニコチンには強い依存性があり、血管を収縮させ、高血圧、動脈硬化を起こし心筋梗塞や脳血管障害を引き起こす事が知られています。心筋梗塞の発症率は非喫煙者の約3倍にもなると言われています。また、この他にも喫煙により起こされる肺疾患としてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)があります。タバコにより肺胞が破壊されてしまう病気ですが、初期の段階では無症状が多く、かなり進行してから咳、痰、息切れなどの症状が出てきます。喫煙者で症状が出てきたときは、既に進行している可能性がありますが、一度破壊された肺胞は二度と修復されることはありません。

【ライト、マイルド等の表記について】

タバコのパッケージにはライト、マイルド等のニコチンタール量の記載があります。これらのニコチンタール量は、専門の機械で喫煙時にタバコの煙から検出される成分量を計測して決められています。あくまで規定の時間で機械で測定した値なので、喫煙者がタバコを深く吸ったり、根元まで吸うなどをした場合はニコチン以外の有害物質の摂取量が増大する可能性があります。実際に喫煙による肺がん死亡率を比べた場合、むしろ低タールを表示するタバコの方が、中・高タールのものよりも、死亡率が高かったとする報告すらもあります。このように結局は吸い方によって害が増えてしまう為に注意が必要です。また低タールの銘柄の方が副流煙の発生量が増えるともいわれています。

 

【受動喫煙について】

喫煙者が吸い込む主流煙に対して、タバコの先端から出てくる煙を副流煙と言います。この副流煙には、喫煙者本人が吸いこむ主流煙の何倍もの有害物質が含まれています。主流煙と比べて副流煙にはニコチンが2.8倍、タールは3.4倍、一酸化炭素は4.7倍、最も強力な発がん物質と言われるニトロソアミンは52倍も含まれます。喫煙はタバコを吸う人のみならず、周囲の人にも害を与えてしまうのが問題です。特に副流煙に関しては、妊婦さんに対しては流産や早産、胎児の発育障害の原因にもなります。また子供に与える影響としても将来的ながんの発症、喘息、気管支炎といった様々な病気のリスクが高まってしまいます。

さらに喫煙した後は、吐く息からもタバコの有害成分が排出されます。また、タバコの煙は壁や家具、髪の毛、持ち物にも付着します。その成分が手などから体内に入り込む事を三次受動喫煙と言います。三次受動喫煙では、ニコチンが大気中の亜硝酸と反応してできるニトロソアミンが増加し、健康被害もより大きいと言われています。

【加熱式タバコについて】

最近になって紙巻きタバコに代わって加熱式タバコの利用者の割合が特に若い世代で増加しています。加熱式タバコは、タバコの葉や加工品を専用の喫煙具を用いて電気で加熱し、発生する煙を吸引するタバコ製品です。タバコの製造、販売企業の中には加熱式タバコは紙巻きタバコに比べて健康被害が少ないと宣伝している場合がありますが、加熱式タバコの主流煙にも、ニコチンや発がん性物質などの有害物質が含まれている事が明らかになっています。また加熱式タバコ自体が登場してからの歴史が浅く、現時点で加熱式タバコによる将来の健康影響を予測、断言することは困難です。少なくとも健康を増進するものではありませんので、吸う際には紙巻きタバコと同様の注意をした方が良いでしょう。

自分のみならず周りの人の健康を守る為にも、喫煙者は出来るだけ禁煙を試みる、或いは喫煙の際には所定の場所で行うといったマナーを心掛けましょう。

横浜市 医療法人 和田胃腸科外科医院