COLUMN

2022.06.08

禁煙について

【禁煙を開始するにあたって】

喫煙期間が長く、また喫煙本数が多いほど、たばこの害は蓄積され徐々に健康は悪化していきます。しかし、一方で禁煙を実行すれば、病気のリスクが減る事も分かっています。たとえ長年タバコを吸っていたとしても、禁煙を実行するのに遅すぎるという事はありません。また禁煙という行為に取り組む事で様々な相乗効果が期待され、それ自体が健康改善に繋がっていきます。既に何らかの基礎疾患を抱えた方が、禁煙に取り組む事は健康という観点から重要な意味を持ちます。

禁煙による健康改善の効果は、若年の早い段階で禁煙に取り組んだ方がより効果的ではありますが、今からちょうど約30年ほど前にアメリカで報告された公衆衛生の報告書によれば、禁煙は性別・年齢・喫煙による病気の有無を問わず、全ての人々に大きくかつ迅速な健康改善をもたらすと報告されています。禁煙を始めるのに年齢を気にする事はありません。

 

【禁煙の効果について】

禁煙の効果は時間の経過と共に現れます。禁煙後24時間程経過すると、早くも心臓発作のリスクが低下し始めます。また、咳や痰などの自覚症状の改善や、風邪やインフルエンザ感染など呼吸器感染症にかかる危険が低下していきます。2週間から4週間程度経過すると労作時の息切れ、動悸といった症状が改善します。また免疫機能も回復していきます。さらに禁煙後1年程たつと呼吸機能検査で肺機能の改善が認められるようになります。4年後には心臓発作や脳梗塞のリスクが、喫煙を続けた場合に比べて30%程度低下してくる事が分かっています。肺がんに関してはリスクが改善してくるには、禁煙後に少なくとも5年間程度の時間が必要です。禁煙を継続すると10年後には肺がんによる死亡率が50%程度まで低下します。さらに禁煙から15年後には、心臓発作のリスクが非喫煙者と同等のレベルまで低下するといわれています。このように禁煙を続ける事で、健康改善は確実に得られるようになります。重要なのはタバコの本数を減らす【節煙】ではなく、タバコを吸わない【禁煙】を行う事と、禁煙を継続する事です。特に風邪をひいた場合や胸が痛いなどの自覚症状を感じた場合は、タバコを吸わない事で短期的にもリスクが軽減される可能性がありますので無理はしないようにしましょう。

 

 

【禁煙外来】

禁煙の効果に関しては理解していても実際に禁煙を始めると難しい・・と思われてる人は多いです。禁煙が難しいのは、タバコの煙に含まれる有害物質であるニコチンが強い依存性を持っているからです。ニコチン依存症には、意志の力だけでなく、内服処方やカウンセリングなどの治療が有効な場合があります。実際に禁煙外来では、禁煙補助薬の処方や、面接により禁煙の成功率が高まると報告されています。禁煙外来は2006年より保険診療が可能となっています。標準の治療では12週間で5回の診察を受けます。

 

  • 初回診察

初めに喫煙状況を問診し、健康保険等で禁煙治療が受けられるかを確認します。また、使用する禁煙補助薬の選択、禁煙開始日の決定や禁煙に際しての具体的な計画を立てます。

禁煙外来にて保険診療で禁煙治療を受ける為には、以下の条件を満たす必要があります。

 

*禁煙を希望されている事。

*ニコチン依存症診断用のスクリーニングテスト(TDS)を行い5点以上、ニコチン依存症との診断をされる事。

*35歳以上の場合、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上である事。(35歳未満の方は制限はありません)

*治療方法に関しての文章を読み、治療に関する承諾書に署名する事。

② 2~4回目の診察

禁煙に伴う離脱症状や副作用の出やすい時期であり、禁煙補助薬の処方を受けるほか、息に含まれる一酸化炭素(タバコに含まれる有害物質)の濃度を測定し、禁煙状況に応じて医師がアドバイスを行います。

  • 5回目(最終)の診察

今後の注意点に説明や、希望があれば継続的に支援も可能である事、喫煙を再開してしまっても、1年後には再度健康保険を使って禁煙指導が可能な事を説明します。

 

【禁煙外来とオンライン診療】

禁煙外来に関してはパソコンやスマートフォンを用いたオンライン診療で行う事も可能とされています。以前にはオンライン診療による保険治療は、1回目と5回目の診療は対面で行う事とし、2回目、3回目、4回目はオンライン診療で禁煙治療を行うというものでした。しかし、新型コロナウイルス感染症への特別対応として、2021年現在では、かかりつけ患者の場合は、1回目から5回目までの全ての外来を、オンライン診療で行ってよい事になっています。

 

【禁煙外来にかかる費用】

禁煙治療(自己負担3割として)は、処方される薬にもよりますが12週間で13,000円~20,000円程度かかります。しかし1日1箱(20本)程度を喫煙する方なら、タバコ1箱が500円平均の金額で1か月(×30日)=15000円/1か月間くらいかかる計算になります。保険診療で禁煙治療を受けた場合の自己負担額のほうが安くなります。

 

【禁煙外来で処方される禁煙補助薬】

禁煙外来で処方する禁煙補助薬にはニコチンを補充する貼り薬とニコチンを含まない飲み薬であるバレニクリン(商品名:チャンピックス)があります。

 

チャンピックスは、ニコチンが欲しいという気持ちを抑える効果があり、またタバコを吸った時の満足感を抑える効果もあります。

 

【禁煙外来の成功率】

禁煙外来で、禁煙補助薬を使用しても、治療開始12週間後の成功率は60%、1年後の成功率は30%~40%程度です。このように喫煙は一度禁煙しても再発性の高い問題です。しかし再喫煙を繰り返したとしても、禁煙治療を反復して行う事で、長期的には禁煙に成功する方もいます。前回の禁煙治療開始日から1年経過していれば、再び禁煙治療を受ける事ができます。

横浜市 医療法人 和田胃腸科外科医院